ワタオカのやすり

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いい鉄と悪い鉄

呉には全国のヤスリの95%を生産している仁方という地域の、綿岡さんからヤスリについて教えていただきました。
高級なヤスリと安いヤスリにどんな違いがあるのか。いい鑢というのはどんなものなのか。実は鑢に使う素材にも国産材と輸入材があるそうです。いい材料があればいい鑢ができる。いい材料というのは、熱処理の段階が違うそうです。八幡製鉄の溶解炉でドロドロに溶かされた鉄をどのように加工し、どういった成分で構成されているかをきっちりと管理されます。これは「ミルシート」と呼ばれ、証明書として仕入れた原材料に添えられて、仁方の街へやってきます。まるでレモンの原産地証明のようです。国産の材料は、このあたりが安定していてきっちりとしたものを出してくれるから、その後の工程で素材の良い状態を維持することができ、最終的にいいものに仕上がるそうです。
国産材というのは、素材がいいのはもちろんですが、安定性という点でも良い素材のようですね。
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鑢は刃物

鑢というと、ギザギザとした表面を鉄の板に加工しているイメージですが、爪やすりなどあらゆる方向でも綺麗に削ることができるようにするには、わずか1ミリの間に5.5回切り込みを入れ、それを3方向から繰り返すそうです。そうすることによって、目には見えない位の鋭く尖った三角すいが表面に無数に並んだ状態に。この技術は元来刀鍛冶をしていた頃からの技術の積み重ねの為せる日本だけの技術なのだとか。試しにそうやって作られた爪やすりを使わせていただきましたが、吸い付くようなかかり具合から滑り出す感覚は、お話の通り細かい刃物で極めて薄く削ぎ落としているかのようで、正に鑢は刃物だということを、実感させていただきました。つめ先というのは硬いようで、しなやかな無数の繊維の集合体なのだと思います。短いストロークで、繊維を綺麗に削ぎ落とすように削る事ができる様子は、なるほど、刃物です。
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刀鍛冶の技術を残すため

1800年代刀鍛冶であった、ご先祖様が大阪へ渡り鑢の技術をこの仁方へ持ち帰ったのが始まりの、仁方の鑢。刀鍛冶としての技術を鑢へ注ぐため、この3回切るという技術大切にしてこられたそうです。そして、これからもこの3回切りを残していくため、爪ヤスリと、かかとヤスリを2012年に発表。これからもこの技術を大切にしていきたいとお話してくださいました。
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工業と工芸の間で

ヤスリといえば工業製品のイメージが強いのですが、綿岡さんの爪やすりは、手作業のため大量生産ができないそうです。沢山買うから安くしてほしい、との問い合わせも多く、ひとつひとつ手作りのまるで工芸品のような技術でどう応えていくのかが今後の課題だとおっしゃいます。日本の持つ素晴らしい技術「鑢」クレコレでも皆様へ大切にご案内していきます。
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鑢のワタオカ